12/31/2007

リベットと自由意志と2007年と

日本ではすでに年が明けていようが、大多数の方が2008年にこのエントリーを読むとわかっていようが、まだ2007年である。

ということで、今年2007年に亡くなった偉大な研究者を偲びながらエントリーをたててみる。

Benjamin Libet
7月に亡くなった。享年91歳。wikipediaによると、ヴァーチャル・ノーベル賞を2003年に受賞したそうで、こちらで「アットホーム」な雰囲気の受賞講演のムービーを見ることができる。

Libetは実験的な意識研究のパイオニアで、自由意志のディベートに科学的なデータを提供したことでも有名。
その1983年に発表した論文では、主観的報告と時間解像度の高い脳活動計測、さらに筋電活動計測を組み合わせて、自由意志的な気持ちが湧き上がる数百ミリ秒も前に、すでに脳が活動し始めていることを示した。自由意志はイリュージョンである、という考えを強くサポートする研究と位置づけられている。

その後の研究のフォローアップとしては、自分が知る範囲では、Haggardという人の研究が重要か。今年もfMRIを使った研究で、Libetの言う自由意志の存在可能性の余地として唱えた「拒否権」を発動する脳の場所は、ブロードマン9野の一部ではないか、と主張する論文を発表している。

それはそれで良いのだが、個人的に気になるのは、どうやってreadiness potential(準備電位)が生じるのか?というメカニズムの問題。

その前に、readiness potentialとは何か?
RPと略す。どんな脳活動かというと、単純には、実際行動が起こる前に生じる脳活動。それだけでは味もそっけもないから、Libet実験のスパイスを絡めて「セクシーさ」を出してみるとこう:

Libetの実験では、2.5秒くらいで点が時計のようにグルっと一周するモニターを人に見せて、自由なタイミングでボタンを押してもらう。すると、ボタン押しに関連した筋肉の活動より500~700ミリ秒前にそのreadiness potential(RP)が高次運動野あたりに見られることを示した。自由意志というか、インテンションというか、運動を起こそうという気持ちを感じるのは筋活動より300ミリ秒前くらい。実験的には、モニターの点がどこに来た時にその意志が生じたか、あとで教えてもらって、その点から筋電、RPがおこったタイミングを比較すれば、時間順序を知ることができる。Libetの実験データは、RPが始まって数百ミリ秒後にようやく自由意志を感じる、という解釈ができる。

その文脈では、RPは自由意志を感じる前に起こる脳活動、というセクシーな説明もできる。

ちなみに、Haggardの後の再現実験では、RPというよりも、lateralized readiness potentialが「インテンションの気づき」となじむということを提唱した。lateralized readiness potential、偏側性準備電位という難しい訳がウェブで見つかる。lateralizedとは、例えば右手でボタンを押す場合、脳活動が左脳だけで見れるからlateralizedという修飾語がRPについている。LRPと略す。

話がそれた。

LRPなりRPなりなんでも良い。Libetの研究を踏まえて自分が抱く問題は少なくとも2つ。第一に、どうやってRP的な活動が勝手に・自由に生じるのか?そのRPが起こるタイミングを何らかの形で予測・予報できるか?つまり、メカニズムの問題。第二に、RP的な活動が起こった後にどうやってインテンションに気づくのか?気づくことに何の意味があるのか?つまり、脳活動から意識が生まれる仕組みと意識なり気づきの役割の問題。

ここでは、第一の問題を気にしてみる。なぜなら後者よりまだ手に負えそうな気がホンの少しだけするから。(後者の問題を来年の年の瀬くらいに考えるようになることが来年の課題です。。。)

とりあえず次の仮説的なことを考えてみる。

自由な判断でボタン押しをするという課題・文脈が与えられた時点(初期状態)で、押すべきか、押さざるべきかを考えている二つの脳状態・脳活動が同時に生じる。そして、「押すべし集団」の勢いが「押すな集団」を凌駕し、形勢が一気に「押せ」に傾いてRP的活動が生じ、それ以下のプロセスが連鎖反応的に・なだれ的に進み、ボタンを押す。

もしくはノーシンキングな集団とごく少数の「押すべし集団」がいる、という状況が初期状態と考えても良い。そして、「押すべし集団」の勢力が増していってRP的活動につながる。


では、その仮説(?)を示すにはどうしたら良いか?
実験的には、たくさんのニューロンの活動を同時に計測して、その二つの対抗勢力の勢力分布がどう変化するか調べ、RPというマクロ的な活動が生じていく様子を説明していけば良いか。そして、何がきっかけで形勢が変化するか細かく調べれば良いか。

計算論的には、この仮説をモチベーションにシミュレーションして、少なくともRPの発生を説明するネットワークモデルを考える、ということになるか?

後者はすぐにでもできそうな気がする。(もちろん自分はできないけど)
例えば、発想的にはCouzin2005年ネイチャー論文に近いのはどうだろう。そこでは、情報を握った小集団を仮定して、個々のエレメントは誰がその情報を握っているのか知らなくても、バイオロジカルにもっともらしい単純なルールを想定するだけで、集団的意思決定を説明できることを示していた。このモデルで鳥や魚などの集団行動を説明できる。これをベースにして、アイデアをパクッて、神経ネットワークモデルでネットワーク状態の変遷を調べると良いのではないか。(と勝手な楽観的なことを素人だから書く)


では前者の実験的なアプローチをどう考えるか?

人では無理。なので、マカクなりげっ歯類なりハエなり線虫なりで調べるというオプションがすぐに思い浮かぶ。ハエや線虫だと、せっかく人の研究でCMAやSMA/preSMA周辺が大事という知見が得られているのに、その知見を応用するには距離がある。アブストラクトなレベルではだめ、という立場をとるとするなら、マカクなりげっ歯類ということになる。アブストラクトでOKなら、ハエは有力モデルであるのは確か。だから、ハエの研究にアンテナを張っておくと良いアイデアをもらえる機会がありそう。

それはともかく、今、マカクかげっ歯類で研究するとする。
主観的報告はあきらめても、リベット実験モドキ行動課題はできる気がする。(こう考えると、今の意思決定、行動選択という文脈でやられている研究の範疇に収まる恐れもあるのか。。。)

そして、その課題をやっている最中の神経集団活動をマルチ記録・イメージングなりでごっそり計測するということになる。今はネットワークのことを考えているから、単一細胞記録をやりたおしてバーチャルポピュレーションで考えても良い、という立場はたぶん取れない。(できれば相互作用も扱いたいから)
そして、できればネットワークの状態変遷を実験的に操作して、自由意志を操作されたロボットのような行動を引起せたら、かなりいい線いける。

この研究の場合、前頭前野のここのニューロン活動が中央実行系的役割を果たす、的なオチで終わらせるのではなく、下流のニューロンのことや、一見どうでも良さそうな「弱いリンク」にも注目しながら、ネットワークのことを考えてみたい。というかそれをしないといけない。

一見、意外とできそうな気もする。
というかRomoは文脈付けこそ微妙に違えど近いことをすでに手がけているように、こうして書いているうちに思えてきた。最近報告した論文で彼らの言う「noニューロン」は、入力寄り・出力寄りという点では違うかもしれないけど、上の「押すな集団」とアナロジカルなものと捉えられないだろうか。けど、彼はまだマルチ記録をバリバリはやってないはず。だから、相互作用という点でつっこんだことをやれてないはず。局所電気刺激はどの細胞のどこを刺激しているのかわからないし(電極周辺を通過している神経線維も刺激しているはず)、細かいところで非常に不安。ということは、Svoboda実験の方向で考えた方がやはり良いか?ただし、今の光センサーベースのツールは「レチナールの呪い」がどこかに潜んでいるような気がしないでもない。

それから、ホントにネットワークのことを考えるなら相互作用を扱いたいわけで、コネクトーム的な構造情報がないとかなりきつい気もする。。。なぜなら、ネットワークの重要な特徴は「弱い結合」にこそ潜んでいる可能性が過去の事例(例えばスモールワールドネットワーク)から考えられ、従来のほとんどの神経科学研究はその「弱い結合」を見落とす、除外するというバイアスがかかっている・かかっていたおそれがあるから。コネクトーム的なことまで必要だとすると、やはりマウスでやっていくのがベターなオプションな気もする。

大いに「ブーム」に沿った発想で、新しくない、という批判は自分でもよくわかっている。が、それほど悪い方向ではないように思う。こうしてみると、今世の中にavailableな技術を総動員すれば、こういう問題に超まじめにアプローチしていけそうな可能性がこの1,2年で見えてきたのではないか。

来年2008年の今頃。この考えが自分の中でどれくらい具体化しているか??それとも、この局所解から抜け出せるような次のブレークスルーが起こっているのか?

2007年の年の瀬、納めなければいけない目の前の仕事を納めずに、さらに発散させることを考えてみた。(現実逃避とも言う)

update:
リベット関連の本をいくつか。


12/22/2007

クリスマスの素朴な疑問

クリスマスにちなんだ超アホネタ。

なぜ日本ではクリスマスにKFCが繁盛するか?

これは、アメリカに来た当初、ステファンに指摘されて気づいた問題である。その昔、自分もクリスマスにKFCでチキンを買ったクチだが、確かにおかしい。。。

アメリカでは、KFCなんてしょせん二流ファーストフード。(「一流」があるかは知らんが)

クリスマスなんて特別な日に、KFCのチキンを食べる日本人が理解できん。

というアメリカ人の主張は確かに正しい。実際、その批判?への対抗は困難を極める。例え日本語で対抗できたとしても。。。


クリスマス ケンタッキー

ググッてみると、確かにその盛り上がりようがわかる。
例えば、nikkeiさんの記事

特別な夜にとっておきのケンタッキー!


Superb KFC for special night!
とでも訳したらいいか。

アー・ユー・キディング?
(お前、からかってんのか?)
と言われそうである。。。


では、この日本独自の文化の発祥はいつ・どこか?

こんな記事があった。この現象の起源はmysteriousらしい。。。

さらに、Xmas KFCでググッたら、こんな記事があった。かなりワロタ。。。日本人をネタにされてんのにわらける。。。くやしいけど。。。

この記事にあるように、ひょっとしたら70年代の文化的侵略時代に、このおかしな戦略が広まって、根付いたのかもしれない。確かにその当時は、ファーストフードそのものが新鮮で、アメリカンな感じだったから流行ったのだろう。。。

それにしても、戦略を企画した人が笑っている姿を想像すると、ちょっと腹が立つ。。。

なぜ日本ではクリスマスにKFCが繁盛するか?

昔、日本人はアメリカに憧れていて、それに便乗した企業戦略がはまり根付いてしまったから。ということになるか。

これでステファンともう少しましなデベートができそうだ。

ちなみに、アメリカでは日本食はかなりハイデフィニションな食事。日系企業がアメリカ人をだます?ことはできないだろうか。。。

聴覚機能を支えている遺伝子たち

聴覚機能はどんな遺伝子たちに支えられているか?

そんな問題意識で調べた論文を、独断と偏見で、調べた範囲内でまとめてみる。ちなみに、聴覚機能と言っても、主に蝸牛で働いている遺伝子たちの話(例外もあり)。この分野は、今回取り上げた論文を読んで初めて知ったことばかりなので、情報の精度はいつも以上に低いです。。。(誤り訂正等は大歓迎です。よろしくお願いします。)

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1.総説
まず総説を二つ。

Trends Mol Med. 2006 Feb;12(2):57-64. Epub 2006 Jan 10.
From deafness genes to hearing mechanisms: harmony and counterpoint.
Petit C.

途中から細かい話も登場するが、この分野の概要を理解するには最適な総説か。著者のPetitは、この分野の大御所的存在のようだ。

この総説ではまず、聴覚障害について解説がある。続いて、感覚神経性難聴(sensorineural deafness)と遺伝の関係が解説され、具体的な遺伝子と聴覚障害との関係がまとめられている。最後に、この分野の展望を議論している。

多くの研究は、マウスの分子生物学・分子遺伝学の成果によるところが多いようで、マウスの研究が人の聴覚障害の研究にどれくらい貢献できるか、そのメリットと課題について触れている。最後に、実際の成体を扱ったin vivoの研究の必要性を強調している。

論文中のBoxやTableも良い情報。

ちなみに、以下を読み進める上での参考情報をここで。
感覚神経系難聴のうち非シンドロームタイプ(non-syndromic forms)をさらに細かく区別する時にDFN, DFNA, DFNBという呼び方がされる。
DFNとは、X染色体とリンクした難聴。
DFNAとは、常染色体優勢遺伝の難聴。
DFNBとは、常染色体劣勢遺伝の難聴。
それぞれの遺伝子座が特定される度にDFNB1といった番号が割り当てられていくようだ。

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もう一つ総説。
Nat Genet. 2001 Feb;27(2):143-9.
A genetic approach to understanding auditory function.
Steel KP, Kros CJ.

少し前の総説になるが、こちらも蝸牛、特に内有毛細胞、外有毛細胞の機能と関連した遺伝子群についてまとめられている。


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2.Petitの研究
Petitの研究で面白いと思ったものを二つ。

Cell. 2006 Oct 20;127(2):277-89.
Otoferlin, defective in a human deafness form, is essential for exocytosis at the auditory ribbon synapse.
Roux I, Safieddine S, Nouvian R, Grati M, Simmler MC, Bahloul A, Perfettini I, Le Gall M, Rostaing P, Hamard G, Triller A, Avan P, Moser T, Petit C.

オトファーリン(Otoferlin)という、聴覚障害のうち常染色体劣勢遺伝の候補遺伝子として見つかった遺伝子がある。この論文でその機能を明らかにしている。

このオトファーリンは内有毛細胞(inner hair cells)のシナプス部位にいて、カルシウムと結合して、シナプス小胞のエキソサイトーシスを制御する重要なタンパク質(syntaxin1とSNAP25)と相互作用することがわかった。このオトファーリンを欠損させると、そのエキソサイトーシスが完全に止まる。したがって、オトファーリンは、有毛細胞から聴覚神経への情報伝達に必要不可欠だということがわかった。


Nat Genet. 2006 Jul;38(7):770-8. Epub 2006 Jun 25.
Mutations in the gene encoding pejvakin, a newly identified protein of the afferent auditory pathway, cause DFNB59 auditory neuropathy.
Delmaghani S, del Castillo FJ, Michel V, Leibovici M, Aghaie A, Ron U, Van Laer L, Ben-Tal N, Van Camp G, Weil D, Langa F, Lathrop M, Avan P, Petit C.

常染色体劣勢遺伝で、DFNB59の候補遺伝子を発見したという話。その遺伝子の名はpejakin。面白いのは、この遺伝子は内有毛細胞ではなく、その後の聴覚経路(下丘まで)のニューロンで発現しているという点。機能はわかっていないが、変異を入れたpejakinを「ノックイン」したマウスは聴覚障害を起こす。つまり、内有毛細胞以外の聴覚経路が正常に機能するのにこのpejakinは必要、ということになりそう。

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3.TMC1と聴覚障害
2002年に同定された遺伝子TMC1に関連した論文を3つ。

Nat Genet. 2002 Mar;30(3):277-84. Epub 2002 Feb 19.
Dominant and recessive deafness caused by mutations of a novel gene, TMC1, required for cochlear hair-cell function.
Kurima K, Peters LM, Yang Y, Riazuddin S, Ahmed ZM, Naz S, Arnaud D, Drury S, Mo J, Makishima T, Ghosh M, Menon PS, Deshmukh D, Oddoux C, Ostrer H, Khan S, Riazuddin S, Deininger PL, Hampton LL, Sullivan SL, Battey JF Jr, Keats BJ, Wilcox ER, Friedman TB, Griffith AJ.

DFNA36とDFNB7と11の原因遺伝子としてこのTMC1という遺伝子が発見された。TMCとはtransmembrane cochlear-expressed geneの略。

この論文の興味深い点は2つ。第一に、この遺伝子はdnマウスというすでに知られていた難聴マウスの原因遺伝子でもあったという点。このマウスを対象に、より基礎的な研究が可能ということになる。第二に、そのマウスをモデルにした研究から、この遺伝子はマウスが生まれた後(P5から)に有毛細胞で発現し始めるという点。機能は現時点でもまだわかっていないようだが、先天的な進行性聴覚障害の鍵を握る遺伝子ということになるか。


Nat Genet. 2002 Mar;30(3):257-8. Epub 2002 Feb 19.
Beethoven, a mouse model for dominant, progressive hearing loss DFNA36.
Vreugde S, Erven A, Kros CJ, Marcotti W, Fuchs H, Kurima K, Wilcox ER, Friedman TB, Griffith AJ, Balling R, Hrabé De Angelis M, Avraham KB, Steel KP.

同じ研究グループが、上の論文と同時に発表した論文。ENUという化学物質を使って、マウスのDNAにランダウに変異を起こすプロジェクトで偶然見つかった難聴マウス、ベートーベン(Beethoven)の報告。実はこのマウスもdnマウスと同様、TMC1に変異を持つ。


J Comp Neurol. 2008 Jan 20;506(3):442-51.
Maturation of auditory brainstem projections and calyces in the congenitally deaf (dn/dn) mouse.
Youssoufian M, Couchman K, Shivdasani MN, Paolini AG, Walmsley B.
dnマウスの聴覚経路の解剖。生後発達に注目している。聴覚神経の蝸牛核側の神経終末をエンドバルブと言うが、そのサイズがdnマウスでは減少していることがわかった。


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4.蓋膜の働き
蝸牛は大まかには3つのピースから成る。

蓋膜(tectoial membrane)
コルチ基(organ of Corti)
基底膜(basilar membrane)

コルチ基は、基底膜と蓋膜にサンドイッチされている。ちょうど上で書いた通り。

コルチ基に内有毛細胞がいて、聴覚神経に主な聴覚信号を伝える。基底膜は、いわゆるフーリエ変換的な音の周波数分解をして、内有毛細胞に振動情報を伝える。

では、蓋膜は何をするか?

コルチ基にある外有毛細胞を介して蓋膜は基底膜と物理的につながっている。共鳴を起こして信号増幅、周波数チューニングに関わっているのではないかという説はあったようだけど、よくわかっていなかった。けど、Richardsonたちのグループが立て続けに重要な事実を明らかにしている。

Neuron. 2000 Oct;28(1):273-85.
A targeted deletion in alpha-tectorin reveals that the tectorial membrane is required for the gain and timing of cochlear feedback.
Legan PK, Lukashkina VA, Goodyear RJ, Kössi M, Russell IJ, Richardson GP.

という論文では、α-Tectorinがなくなって、外有毛細胞を介した物理的な連絡がなくなる(減少する)とどうなるか?という疑問を立てて研究している。α-Tectorinは蓋膜を構成するタンパク質の一つ。

研究では、その遺伝子の3番目のエクソンを欠損したマウスを作成して、蝸牛の働きを調べている。その結果、コルチ基と基底膜の形は正常だけども、働きがおかしくなることがわかった。具体的には、基底膜の感度が落ち、通常見られるはずの蝸牛内の共鳴器的な働きが悪くなっていることがわかった。


Nat Neurosci. 2005 Aug;8(8):1035-42. Epub 2005 Jul 3.
A deafness mutation isolates a second role for the tectorial membrane in hearing.
Legan PK, Lukashkina VA, Goodyear RJ, Lukashkin AN, Verhoeven K, Van Camp G, Russell IJ, Richardson GP.

α-Tectorinのアミノ酸置換を起こしたマウスに注目している。このマウスは、先天性聴覚障害を持つオーストラリアのとある家系のモデル動物。

このマウスは、上のマウスと同様、蓋膜の異常はあるけども、コルチ基との接点は残っているらしい。この研究の驚きは、蓋膜とは関連していないと考えられていた内有毛細胞に機能的なリンクが見つかったということ。具体的には、変異マウスで、内有毛細胞のチューニングが大きく変化していることがわかった。基底膜を的確に揺らすのに蓋膜と外有毛細胞との正常な接点が大事、ということになりそう。


Nat Neurosci. 2007 Feb;10(2):215-23. Epub 2007 Jan 14.
Sharpened cochlear tuning in a mouse with a genetically modified tectorial membrane.
Russell IJ, Legan PK, Lukashkina VA, Lukashkin AN, Goodyear RJ, Richardson GP.

今年報告された論文では、蓋膜を構成する別のタンパクβ-Tectorinに注目している。この遺伝子をノックアウトすると、低周波数帯域の感知にだけ異常が生じることがわかった。つまり、基底膜で起こるであろう周波数分解の性能に蓋膜は関わるだろう、ということになりそう。

ということで、基底膜、コルチ基、蓋膜が三位一体となって、複雑な仕組みで音の振動が変換されているようだ。

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5.TRPチャネル
Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Dec 4;104(49):19583-8. Epub 2007 Nov 28.
A helix-breaking mutation in TRPML3 leads to constitutive activity underlying deafness in the varitint-waddler mouse.
Grimm C, Cuajungco MP, van Aken AF, Schnee M, Jörs S, Kros CJ, Ricci AJ, Heller S.

ごく最近発表された論文。TRPチャネルが聴覚系でも働いているということを報告した論文。

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何を学ぶ?

とにかく基礎知識を身につける上でも非常に勉強になった。。。

それはともかく、第一に学んだことは、蝸牛レベルですでに超複雑、ということ。
まだわかっていないことがいろいろありそう。例えば、Richardsonたちの研究を考えると、基底膜・内有毛細胞の活動を蓋膜が支えているわけで、蝸牛というシステムがどう働いているのか、実はよくわかってないということになりそう。彼らの研究は、人工内耳の新しいストラテジーを考える上でも参考になる気もする。入力をよりバイオロジカルな事実に基づいて最適化できれば、もっとスムースに脳の可塑性を引き起こせるのかもしれない。

第二に学んだことは、geneticsの環境が整っている現状。
マウスを中心にこれだけgeneticsの研究が発展しているということは、より中枢レベルの研究にも間違いなく応用されていきそう。個人的には、ここで扱ったPetitの研究の応用に興味が沸く。これまでの聴覚研究はネコ、モルモット、ラット中心で行われてきた気がするけど、これから数年でマウスの聴覚研究は間違いなく注目を浴びると思われる。長期的にはバレルよりも良い気もする。なぜなら、感覚刺激の制御が圧倒的にやりやすいから。それにハイスピードで耳たぶの動きまでモニター、ということは必要なさそうだし運動系との関連は少なそう。マウスがどんな知覚をしているか人でも何となく空想できそうな気もする。。。(バレル系のイリュージョンなんて想像できない。)ただし、聴覚の場合は自分が発する音・振動をどうするか、という問題は残るか。これはかなりやっかいな問題。ハエの聴覚研究は今のところあまり聞かないし、聴覚という点だけで考えれば、ハエよりも良いモデル生物とは言えそうか。

12/15/2007

人工内耳と脳の適応 パート2:実際に起こる脳内変化

人工内耳と脳の可塑性についての第二弾。今回は動物実験ではあるが、人工内耳を取り付けたら、実際脳が適応的に変化したことを報告した論文を2つほど。

動物の人工内耳、というとはじめ意外だったけど、少なくともネコとモルモット用の人工内耳は開発されていて基礎研究に利用されているようだ。今回は、その中で「ネコの脳の可塑性」というテーマを扱った論文を読んでみた。

問題意識は、人工内耳を取り付けることで、脳のどこで、どんな変化が観察されるか?ということ。

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聴覚情報の流れ
まず予備知識として、聴覚情報の流れを簡単に。英語版wikipediaのAuditory systemも参考に。

有毛細胞→聴覚神経→蝸牛核→上オリーブ核(複合体)→下丘→視床(内側膝状体)→一次聴覚野→・・・

ただし、実際の解剖は、途中の神経核をスキップする線維があったり、逆方向の線維があったり、ここに書いていない神経核へ情報が「リーク」したりと超複雑。

ちなみに、前回のエントリーにあったように、人工内耳は蝸牛の聴覚神経を直接電気的に刺激して、聴覚情報の流れを回復させる。

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聴覚野の応答変化
はじめの論文は、1999年サイエンスに掲載された論文

先天的に聴覚障害を持つネコに人工内耳を取り付けたら、音に対して反応・行動できるようになり、一次聴覚野で聴覚応答が観察されるようになったことを報告している。

1973年にMairという人が先天的に聴覚障害を持つネコを報告しているようだ(文献情報)。ここで紹介する1999年の論文では、そのネコに注目し、人工内耳を数ヶ月間取り付けている。

まず、そのネコの行動を観察している。
音が鳴ると「耳たぶ」がピクッと動く反射行動が見れたり、音で目覚めることが観察されるようになったそうだ。さらなる確認のため、パブロフの犬のような条件付けのトレーニングしている。具体的には、特定の周波数の音がなると、餌がもらえることを学習させる。音が鳴ったら、餌のところに移動するかを調べて、学習したか評価する。その結果、1-3週間のトレーニングで、装置を取り付けたネコの条件付けに成功したとしている。つまり、人工内耳を取り付けたネコも行動的に音が聞こえている、ということがわかる。

では、脳の反応はどう変化するか?

次の実験では、聴覚野に音の情報が伝わっているかを調べている。装置を取り付けたネコ、装置を取り付けなかった先天異常を持つネコ、先天異常を持たないネコ、この3グループの聴覚野ニューロンの応答を計測し、比較している。

その結果、装置を取り付けたネコでは、
1.音が鳴った直後(30ms以下)に現れる応答が、取り付けなかったネコより大きくなる。
2.音が鳴ってから100-150ms後くらいの応答が現れる。(取り付けなかったネコでは観察されない)
3.人工内耳を取り付けた期間が長いほど、1の応答が大きくなり、その大きな応答をする聴覚野の領域が広くなる傾向がある。
4.6層構造を持つ聴覚野の中でも、視床から入力を受ける層と上層で大きな電流が流れるようになる。
ということがわかった。

3,4については、先天異常を持たないネコと比べても大きい傾向があるようだ。
以上が研究でわかったこと。

ということで、先天異常を持つネコでも、人工内耳を取り付けることで一次聴覚野が聴覚刺激に反応し、音に対して行動できるようになることがわかった。

では、その脳の変化は一次聴覚野に限ったことなのか?次の論文では、もっともっと早い処理段階でも変化が起こったことを報告している。

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シナプス構造の回復
次の論文は、2年前サイエンスに報告された論文

聴覚神経の神経終末が、人工内耳を取り付けることによって構造的な変化を起こす、正常な構造に戻る、ことを報告した論文。

しつこいけど、解剖のおさらい。
有毛細胞→聴覚神経→蝸牛核

この経路で、聴覚神経の終末をエンドバルブ(endbulb)と呼ぶ。聴覚神経→蝸牛核のシナプスの出力側が、エンドバルブ。そのエンドバルブは、他の脳内のシナプスを見渡しても巨大、という点も大きな特徴。

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さて、この論文でも先天的に聴覚障害を持つネコに注目し、人工内耳を取り付けている。そして、3ヵ月後のエンドバルブの構造を電子顕微鏡で調べている。

なぜ、エンドバルブの構造に注目したか?
聴覚は「処理スピード」が大事な感覚で、エンドバルブは的確な処理スピードを実現するのに適していそう、ということが言われているから。先天異常をもつネコの聴覚神経は異常な構造を持つことがわかっていたから。

ということで、人工内耳を取り付けると、その異常になっていたエンドバルブが変化を起こすのではないか?正常な構造に戻るのではないか?という仮説を立てて、それを検証したわけである。

研究からわかったことは、
1.先天異常を持つネコのエンドバルブは肥大化している。
2.人工内耳を取り付けることでエンドバルブのサイズが小さくなり、もともと正常な聴覚機能をもつネコのそれと同等になる。
ということ。

他にも、そのエンドバルブにあるシナプス小胞(神経伝達物質を含む小胞)の数が増えることがわかった。情報を伝えるという意味で、機能に直接結びつく構造的な変化と解釈しても良さそう。

ということで、人工内耳を取り付けて聴覚の信号が入力されると、異常だったエンドバルブが構造的に正常な状態に回復する、ということになる。

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以上二つの論文から何を学べるか?

少なくとも一次聴覚野と聴覚神経で可塑的な変化が見られる。他にも下丘での変化を報告している論文もある。おそらく聴覚経路のいろんなところでいろんな変化が起こるのだろう。

もちろん、ネコの研究を直接人に当てはめるわけにはいかないけど、人の脳でも何らかの構造・機能的変化が起こって、聴覚機能を回復していくのではないかと想像される。他にもリップリーディングといった、他の感覚を利用したり、トップダウン的なレベルの変化というのも想像できそうか。とすると、聴覚系を超えたいろんなところで柔軟な変化が起こっている可能性もある。

今回のケースでは、先天的に障害を持つネコを対象にしていた。
では、後天的というか、加齢と共に聴覚障害を負った場合はどうか?という疑問は現時点では完全に欠けているように思われる。いわゆる「クリティカルピリオド」の発想をどこまで適応できるかわからないが、もし仮に視覚野のそれをあてはめて考えると、生後数年経った動物を対象に同じ実験を行ったら、果たして同じことが見れるのか?もし違う変化が見られるなら、どう違うのか?といったことに興味がわく。また、その変化を促進できる方法はあるか?

もっともっと基礎研究的な観点から次のような素朴な疑問もわく。早い時期に聴覚を回復したケース、後期に障害を負って機能を回復したケース、そして通常、という3つのケースで「聞こえ」は、どれくらい似ていて、どれくらい違うのか?

とにかく、いろんなことがわからない。

今回いろいろ調べている過程で、このテーマに関連した研究分野のうち、遺伝子レベルの研究がかなり進んでいることがわかった。ひょっとしたら次回、そのトピックを扱うかも?です。

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参考文献
Science. 1999 Sep 10;285(5434):1729-33.
Recruitment of the auditory cortex in congenitally deaf cats by long-term cochlear electrostimulation.
Klinke R, Kral A, Heid S, Tillein J, Hartmann R.
前半で扱った論文。
聴覚野でのみ変化が起こったことを主張するには、若干データが不足している(だからか、聴覚野でのみ変化が起こった、とは主張していない)。行動データのコントロールが若干不安(人工内耳を取り付けていないネコのデータを出していない)。が、とにかく興味深い結果。早い反応は、人工内耳を取り付けないケースでも見れているという点は、「聞こえ」を考えると非常に興味深い。電気生理実験は麻酔下という「聞こえていない」状態で研究をしているので、後期の反応がホントに聞こえに結びつくのかは不明。

Science. 2005 Dec 2;310(5753):1490-2.
Restoration of auditory nerve synapses in cats by cochlear implants.
Ryugo DK, Kretzmer EA, Niparko JK.
後半扱った論文。
先天異常のネコで、もともと巨大なエンドバルブがなぜさらに巨大化していたのか?可塑性研究という点で興味深い。使われないとエンドバルブは肥大化する、という解釈で良いのか?次のレベルのcalyces of Held(これもエンドバルブに並んで大きいシナプス)でも似た構造変化が起こっているのか?

The Central Auditory System
聴覚系の教科書。
第一章で、聴覚経路の解剖と生理の概要が網羅されている。以下の章は各論、という構成。第一章だけでも膨大な情報を得ることができ非常にお薦め。主にネコの研究が集約されている。

さらに文献
J Neurosci. 2007 Dec 5;27(49):13541-51.
Electrical stimulation of the midbrain for hearing restoration: insight into the functional organization of the human central auditory system.

Lim HH, Lenarz T, Joseph G, Battmer RD, Samii A, Samii M, Patrick JF, Lenarz M.
長くなりすぎて今回扱えなかったごく最近の論文。
聴覚神経を腫瘍等のために切除して人工内耳の恩恵を受けられないケースもある。現在、聴覚経路の他の場所を刺激する神経プロスセティックスの研究が進められている。この論文は、神経線維腫症2型という疾患で聴覚障害になった3人の患者さんの臨床研究。下丘をターゲットにした神経プロスセティックスの報告。現時点では、人工内耳のようなメリットは期待できない。が、少なくとも蝸牛核を対象にしたプロスセティックスと同等のパフォーマンスを示し、かつ手術のリスクが低いというメリットはあるようだ。実用レベルに到達させるにはもっと基礎研究も含め研究を進める必要がありそう。個人的に思うのは、下丘でどのように音の情報が処理されているのか細胞レベルでもっともっと深く理解できれば、聴覚機能を回復させるためのより適切な刺激方法のヒントが得られる気がする。聴覚神経と同じロジックで刺激してはまずい気がする。なぜなら、下丘に到達するまでに相当な処理が行われているだろうから。基礎と臨床両方の連携が必要な気がする。


12/08/2007

人工内耳と脳の適応 パート1: 人工内耳とは?

人工内耳と脳の変化・可塑性をテーマに少し調べてみる。
今回はまず人工内耳そのものを中心に説明する。後半少しと次回、人工内耳と脳の可塑性のテーマを扱おうと思う。

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そもそも人工内耳とは何か?

人工内耳cochlear implant)は、失われた聴覚機能を取り戻すための装置のこと。現在、世界中で11万人以上の人がその恩恵を受けていて(文献)、小さな子供から大人まで、幅広い年齢層に適用可能。静かな環境なら、健常者とほぼ同等に会話を認識できるまで回復するケースもあるそうだ。

この人工内耳は、内耳の蝸牛cochlea)にある聴覚神経auditory nerve )を電気的に刺激し、音の信号を脳まで伝える手助けをする。最近注目を浴びている神経プロスセティックス(neuroprosthetics)の中で、50年以上の歴史を持つ先駆的かつ最も成功している例でもある。

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では、人工内耳はどう機能するか?

英語版ウィキペディアにかなり詳しい解説がある。この記事によると人工内耳は次のパーツから構成される。

マイクロフォン・・・空気の振動をキャッチして電気信号に変換する。
スピーチプロセッサー・・・電気信号にフィルターをかけて、適切な音信号に整える。
トランスミッター・・・プロセッサーで処理された音の信号を、電磁誘導を利用して内部装置(レシーバー?)へ伝える。

レシーバーとスティミュレーター・・・受け取った信号を、神経を刺激するための電気信号に変換する。
電極・・・最大22本で、直接聴覚神経を電気的に刺激する。


音はどう処理されて聞こえるか?
通常、音の振動情報は、まず内耳の蝸牛で電気信号に変換される。その際、蝸牛の有毛細胞
hair cells)が音の振動情報を電気信号に変換する。そして、その電気信号が聴覚神経を伝わり、脳内のいくつもの神経核での処理を経て、最終的には大脳新皮質、特に聴覚野へ伝えられる。その結果、音が「聞こえる」、と考えられる。

大雑把にまとめるなら、
音による振動→有毛細胞→聴覚神経→神経核→大脳新皮質
と書いて間違っていないか。

その入り口の蝸牛(多くは有毛細胞)に、先天的、あるいは後天的に異常が生じて聴覚障害を負った場合、なおかつ、聴覚神経そのものは機能できる場合、この人工内耳は威力を発揮する。つまり、音の振動信号から神経パルスへ変換する部分に異常が生じただけなら、その変換部分を人工内耳と置き換えよう、というロジックである。

つまり、
音による振動→人工内耳→聴覚神経→神経核→大脳新皮質
という聴覚信号の新しい流れを作ることで、人工内耳は機能する。ちなみに、補聴器は音の振動を単に増幅する(大きくする)だけなので、音の情報の流れを変えるわけではない。発想が全く違う。

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では、人工内耳を取り付けると脳の中でどんな変化が起こるのか?

新しい情報の流れができたら、脳が受け取るべき信号は、本来受け取る信号とは若干違うはず。それでも聴覚機能が回復するということは、その人工内耳からの信号に脳が何らか適応しているはずである。脳が変化しているはずである。脳が潜在的に持っている脳力を発揮しているはずである。

脳がどれくらい・どのように変化するのか詳しくわかれば、より効果的な人工内耳による聴覚機能の回復法を考えることができるかもしれない。

最近オンラインで公開された「人工内耳と脳の可塑性(Cochlear implants and brain plasticity)」というタイトルの総説に多くの情報が集約されている。そこでは、人工内耳と脳の可塑性に関連した実験証拠がいくつも紹介されている。主に大脳新皮質の聴覚野、その中でもはじめに聴覚信号を処理する一次聴覚野での可塑性に注目している。

そこでは次の3つのトピックを扱っている。
1.動物実験に注目した一次聴覚野の変化
2.実際に人工内耳を取り付けた方の臨床報告
3.ピッチ知覚(音の高低の知覚)、会話の知覚を調べた心理物理実験と聴覚野の変化との関係

これらの3つのトピックに関する膨大な研究を集約している。

それらの研究結果から総合すると、直接的な因果関係はわからないにしても、聴覚野の変化と人工内耳による聴覚機能の回復に対応関係があるのはコンセンサスが得られていると思ってよさそうである。

今回はここまで。
次回は動物実験に注目して、具体的な研究を紹介しようと思う。できれば、人工内耳以外の聴覚系神経プロスセティックスの話も扱おうと思う。

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参考情報

Hear Res. 2007 Sep 1 [Epub ahead of print]
Cochlear implants and brain plasticity.
Fallon JB, Irvine DR, Shepherd RK.

上で少し紹介した総説。膨大な研究がまとめられている。決して読みやすいとは言い難い。が、人工内耳と脳の可塑性の情報を知るには良い情報源になる。

やはりウィキペディア。特に英語版の充実ぶりは感動的。
例えば、

cochlear implant
sensorineural hearing loss
cochlea
hair cell
auditory system
neuroprosthetics

各ページ上のリンクからさらに情報を調べられる。

12/07/2007

コネクトーム

pooneilさんのエントリーとスウィングしてみます。

(BloggerはTB機能をサポートしてないようです。
無断で引用する形になってすみません、
pooneilさん。。。)


分子生物学の爆発的発展は、DNAの二重らせん構造と塩基対の法則がわかってから。遺伝コードの解明、セントラルドグマの提唱はそれに続く。

このアナロジーで、

システム神経科学の爆発的発展は、神経回路の構造とその基本法則がわかってから。神経コードの解明、セントラルドグマの提唱はそれに続く。

かも。。。

とにかく、回路を調べつくして情報を多くするだけではなく、構成原理まで踏み込んでいかないとホントのブレークスルーはない、ということで。

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最後に、コネクトーム関連の読み物でお茶を濁します。。。

Nature. 2007 Nov 1;450(7166):130-1.
Brain storm.
Smaglik P.
Full text
学会でのプレジデンシャル・レクチャーの裏を知るのに良さそう。

Nat Methods. 2007 Nov;4(11):975-81.
Following the wires.
Blow N.
Full text

シナプスレベルでのコネクトームの現状と課題など。